早期警戒制度が顧問先に与える影響
2019.07.19
※株式会社名南経営コンサルティング 顧問(元名南コンサルティングネットワーク代表)の影山によるコラム。最新のツールや話題のテーマをさまざまな切り口でお届けします。
2019年3月期の地銀決算が出揃った。北陸3県の6地銀の決算では5行が減益となり、東北の地銀15行の内3行が有価証券含み損を抱える状態に陥った。
返済猶予を受けた取引先の業績回復が見込めず、引当金の積み増しで減益要因となったり、有価証券の益出しで利益を確保してきた地銀が含み損を抱えたりしている状態では、こうした決算対策も行えなくなってきた。
4月3日に、金融庁は地域金融機関に対する新しい監督指針を発表した。金融庁が銀行破綻を防ぐ目的で導入した「早期警戒制度」を見直し
・従来は海外業務を展開しない地銀では自己資本比率が4%であれば健全とされたが
・今後は自己資本比率4%であっても中長期的な「稼ぐ力」を重点チェックし、必要に応じて業務改善命令を出す
決算でやりくりした「収益」でなく、「持続可能な収益」であるかどうかを、金融庁検査の重点項目としてチェックするようだ。問題は「持続可能」な「定義」が曖昧で、検査官の推量によっては業務改善命令が出されてしまうことになるのかもしれない。
地銀が業務改善命令を出されたら、「業務効率化」を旗印に店舗閉鎖・人員削減等の施策で経費削減を行い、「持続可能な収益」の確保を求めなければならない。こうした対応のスピード感がないとなれば地銀同士の統合・再編へと進んでいくのかもしれない。
店舗閉鎖になれば、返済猶予を受けている企業は別の店舗(別の支店長)の評価を受けることになり、従前と同様の対応が待っているとは限らないことを念頭においておく必要も生じるだろう。