銀行の事務所に対する評価を上げる活動
2019.05.22
※株式会社名南経営コンサルティング 顧問(元名南コンサルティングネットワーク代表)の影山によるコラム。最新のツールや話題のテーマをさまざまな切り口でお届けします。
金融庁の「経営者保証のガイドラインの活用」(以下 ガイドライン)が導入されて約5年が経過する。半年単位で金融庁が民間金融機関(546金融機関)にガイドラインの活用実績を調査公表しているが、平成30年度4月~9月の期間での新規融資件数約168万件のうち、経営者保証に依存しない融資の割合は19.1%、前半期比で2.8ポイント増加という結果であった。
銀行から新規に融資を受けるのに、「個人保証は要りません」と言わるのが5件に1件という状況で、ガイドラインが5年経過していても、これが現実の姿でもある。
確かに中小企業の多くは
・企業経営に重要な資産でその所有に関して法人・個人の明確な分離がされていない
・法人からの代表者貸付が多額である
等の理由により、融資する側からすれば法人・個人一体で経営している以上、「個人保証がないと融資金の回収に万一のことがあれば」と考えるのも当然のことではある。
先般、地域銀行に対する「経営者保証に関するガイドライン」のアンケート調査の結果が、金融庁より公表された。対象となった金融機関は地域銀行105行で、計8問からなるアンケートであった。興味深い項目をあげると
・貸出債権に対する経営者保証からの回収率は1.0%未満とする金融機関が63%ある
・ガイドラインの活用で経営者の「規律付け」の低下を危惧するという回答が52%ある
要は個人保証をとっても金融機関の融資金回収の役には殆どたたず、「個人保証を取っているから経営に気を抜かずにね」といった金融機関の忠告に近いものが、経営者保証を取ってきたことの証であることが、今回の調査で明らかになった。
ガイドラインを積極的に活用する金融機関と消極的な金融機関では、次のような差異が見られる。活用を積極的に行う金融機関のメリットとしてあがったのが
・顧客との信頼関係の強化
・事業性評価の活用促進につながる
・職員の目利き力の向上
・取引先の円滑な事業承継に繋がった
会計事務所も顧問先の事業承継が更に進む中、「所有と経営の分離」を経営者に促して、金融機関から経営者保証を削除してもらう取り組みを活発化させていくことが、金融機関からの評価をあげることに繋がっていくのではないかと思う。