納税者倍増時代の相続税の税務調査
2019.01.09
※株式会社名南経営コンサルティング 顧問(元名南コンサルティングネットワーク代表)の影山によるコラム。最新のツールや話題のテーマをさまざまな切り口でお届けします。
平成29事務年度の相続税調査状況が公表された。基礎控除の引き下げがあった平成27年の相続申告を中心にした改正後初めての税務調査の実態が見て取れる。
平成26年中の死亡者数は約127万人、相続税の課税対象となった被相続人数は約56,000人なので、死亡数に対する課税対象の割合は約4.4%。平成27年は同様に死亡者数が129万人、課税対象の被相続人数は約103,000人なので、課税対象の割合は約8%となり、改正前のほぼ倍となった。
被相続人数が倍増したことによる税務調査の状況がどう変わったのかを見ると
納税者は倍増したが、税務調査の実地件数はほぼ半減した。過去は「相続税の調査は5人に1人」と言われていたが、今後は「10人に1人強」となりそうな感じである。税務署員の増員がない状態ではやむを得ないが、実地調査の件数不足をカバーするのが「簡易な接触」調査であろう。全国的には前年比124%であった。
「簡易な接触」件数を全国の主な国税局単位で見ると
「簡単な接触」による調査は、相続税の無申告者と思われる対象者に対して書面照会を行い自発的な期限後申告を促したり、実地に赴かないで電話や来署依頼で調査すべき問題点等を指摘することで、実地調査の補完の役割を果たしている。税務署には自治体からの死亡情報、固定資産情報、KSKシステムによる過去の納税情報等が集まってくるので、今後、AI導入等で更に精度の高い「簡易な接触」調査が増加すると予想される。