これからの中小企業向け融資
2019.02.12
※株式会社名南経営コンサルティング 顧問(元名南コンサルティングネットワーク代表)の影山によるコラム。最新のツールや話題のテーマをさまざまな切り口でお届けします。
「中小企業金融円滑化法」が施行されて今年で10年目を迎える。債務者区分で破綻懸念先の取引先企業が「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」を金融機関に提出すれば、「正常先」にランクアップされ、融資の継続が可能になり、倒産を回避する仕組みが出来上がった。
これにより再建した中小企業も多くあったが、「延命」に過ぎなかった中小企業も少なくなく、金融機関の与信費用を増大させる懸念が広がってきた。
今年の4月には金融検査マニュアルが廃止され、地域金融機関に対し、赤字や債務超過でも成長性の高い取引先には積極的な融資を求める姿勢を、金融庁は強く打ち出す。昨年から提唱されている「事業性評価融資」に融資可否の軸足を置くよう求めているが、「成長性」を判断できる目利き行員は急速には育たない。
日本リスクデータバンク(以下 RDB)という会社は、全国約70行の金融機関を会員とし、月次で会員の融資先企業の財務情報、属性情報、信用情報などを匿名で収集し、会員に毎月のデフォルト情報を、業種別で前年比、前月比データを提供している。
今年2月には、RDBと3メガバンク及び14の地銀・第二地銀、三菱商事が出資した新会社が立ち上がり、RDBの会員である地銀の財務データ等を合わせた与信データベースを構築していく。過去のスコアリングモデル融資に似た形だが、約80行の取引先の財務データをベースにするので、単独でスコアリングするよりも遥かに精度の高いデータになり、融資可否の大きな判断材料にしていけることになる。
日本IBMも金融機関や大半の会計ソフトメーカーと組み、「会計データ・オン・プラットフォーム」の構築の検討に入るそうだ。財務や会計データを金融機関にデジタルデータとして提供することを目的とし、融資審査の迅速化・高度化を目指す。
少なくとも「紙」の財務情報での融資審査スタイルは早晩に消え、デジタルデータを基にした融資審査が中心になり、AIが加わる形に移行していくのであろう。企業からすれば誤魔化しの利かない時代に入りつつある。