CASE STUDY事例&成功のヒント

事例から学ぶ成功法則

個人開業医の担当者は今年の確定申告に注意

※株式会社名南経営コンサルティング 顧問(元名南コンサルティングネットワーク代表)の影山によるコラム。最新のツールや話題のテーマをさまざまな切り口でお届けします。

医療系メディアで、コロナ禍での患者の診療自粛によるクリニックの経営悪化のデータが報じられている。

①日経メディカル(6/22-6/28調査、回答数4074人)
・同年同時期に比して46.5%の患者数減
・小児科で60.7%減、耳鼻咽喉科で60.5%減、整形外科で53.7%減

②m3.com(会員開業医439人回答)
・6月の前年同月比較で小児科で患者数半減が41.7%
・同様に耳鼻咽喉科で患者数半減が32.1%

③東京保険医協会(6/12調査、回答数930人)
・前年同期比で耳鼻咽喉科の患者数5割減、6割減、7割減合計で77.3%
・前年同期比で小児科で患者数5割減、6割減、7割減合計で65.9%

5月に緊急事態宣言が解除されて3か月、上記データのように患者数及び診療収入は大幅な減少を余儀なくされている。
電話再診の普及や処方薬の長期化等も延べ患者数の減少に少なからず影響もしている。

会計事務所の医療担当者が今後検討・提案しなければいけないことは、「租税特別措置法26条の適用対象にならないか」を今から予測しておくことである。措置法26条は、保険診療収入が年5,000万円以下の個人開業医が、実額経験と概算計算いずれか有利な方を選択できる制度である。

通常時期なら年間5,000万円以下の保険診療収入のイメージは、開業後数年の経過若しくは高齢者開業医が診療日数を少なくして患者数を制限したりする状態で、措置法26条適用者は少なくなっている。
しかし、今年の状態では、例えば通年8,000万円前後の保険収入がある開業医でも、診療科によっては4割減なら保険収入が4,800万円となり、この場合の概算経費は3,226万円となり、実額経費がこれ以下なら措置法申告が税務対策上有利となる。

個人開業医の担当者に対する期待は、少しでも必要経費の算定を多くし所得税負担を軽減することでもある。年末に向けて消耗品の購入を促したり、車両の買い替えの提案をしたりもするが、今年は現時点の実収入に前年比の5~6割程度の収入予測を加えて、経費削減を図り、措置法26条が使えないかシミュレーションしてみることも重要でないだろうか。