CASE STUDY事例&成功のヒント

事例から学ぶ成功法則

2021年の会計事務所の重要な解決課題の一つ

※株式会社名南経営コンサルティング 顧問(元名南コンサルティングネットワーク代表)の影山によるコラム。最新のツールや話題のテーマをさまざまな切り口でお届けします。

年末年始のコロナ感染状況は、一向に収束の兆しを見せない。中小企業庁の「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会」の資料を見ると、感染症による事業承継への影響が取り上げられており、中小企業及び超零細企業、個人事業の事業承継にM&Aによる解決の手法が浸透してきた矢先に、今回のコロナ感染でM&A機運も鈍化しつつあり、結果として過去最多の廃業件数になると警鐘を鳴らしている。

実際に「拡充後の事業承継税制の申請件数」を時系列で見ても、2018年12月の521件を最高に、2019年の月平均申請件数は319件であったが、2020年の9月までの月平均申請件数は219件と低調な水準に留まっている。

2020年9月に実施された東京商工リサーチの「中小企業のM&Aに関するアンケート調査」でも、計画中のM&Aの実施の様子見及び取りやめと回答した件数が全体の1/3を占め、消極化の傾向を示している。

感染状況の長期化で、小規模事業者の親族間承継の断念による廃業や、将来の見通しが立つまで現金が豊富な企業が買い手候補になるのを取りやめるケース、コロナ関連融資の取り組みに忙殺されている地域金融機関がM&A案件の融資審査に手が回らないことなど、中小企業のM&Aが短期的には事業承継の解決策とはなりにくい背景が多く存在する。

中小企業の経営資源には、熟練工や専門職人等の人材やニッチなノウハウ等を保有する超零細企業や個人事業体もあり、こうした事業体が廃業することで経営資源が散逸してしまう。国も「経営資源の集約化」に本格的に取り組まねばならないという危機感から、こうした検討会で議論を重ねている。検討会にはオブザーバーとしてM&A専門会社も多数参加し、議論を見守っているようだ。

一方で、地域の超零細企業が事業承継に対して真の相談役として期待するのは、顧問会計事務所である。税制の指導だけでなく「黒字廃業」だけはさせてはならない。