CASE STUDY事例&成功のヒント

事例から学ぶ成功法則

税務行政サービスと戦えるか?

※株式会社名南経営コンサルティング 顧問(元名南コンサルティングネットワーク代表)の影山によるコラム。最新のツールや話題のテーマをさまざまな切り口でお届けします。

デジタル庁が9月1日に発足する。
先駆けて開発した新型コロナの「ワクチン接種記録システム」(VRS)が稼働して、1日100万回接種を実現させようとしている。途中、ワクチン供給の問題で混乱もあるが、このVRSを開発した期間はほぼ2ケ月で、通常の6倍速で開発実現(日経報道)とされている。過去、政府のデジタル化は予算の割に使えない、使いにくい、低稼働状態……。決して評判は良くなかったが、デジタル庁に民間人材が加わって、このVRSのような開発が進んでいくなら、先の期待は大と言えるのではないか?

6月に公表された国税庁の「税務行政のDX―税務行政の将来像2.0」には「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会を目指す」としている。中でも「相談」という納税者側の項目に

・ 既存のタックスアンサー、チャットボットを充実して納税者の相談の手助けにしたい
・ プッシュ型行政サービスの税務版を提供していきたい

という相談補助システムを検討しているようだ。

タックスアンサーやチャットボットの最大の欠点は、納税者が「知りたいことが何かわからない」ので使えないことにある。
まして税務に関連するような検索ワードがわからない、大半の人が知っているような一般的ワードでは知りたいことに着地するまでに膨大な時間を要することにあった。専門家は得たい回答に近い検索ワードを持っているので不自由でもないかもしれないが、普通の納税者には荷が重すぎるようである。

プッシュ型行政サービスは一部の自治体で実施されているところもあるが、5月に実施された困窮世帯で子育て中の家庭に給付金を提供するサービスは、各自治体が住民税非課税世帯で且つ児童手当を受けている家庭に、児童一人に5万円を給付する「通知」を行い、給付を望まない世帯に限り「申請」を要するとしたプッシュ型サービスが実現した。
従来であれば、給付金対象となる概要を公表し、該当者から申請してもらう方式であったが、これでは給付金の支給が始まるという事実を「知らなければ」、サービスがあっても使えないことになってしまう。

プッシュ型税務相談サービスでは

・ 不動産業者の法定調書から不動産を譲渡した個人に所得税の申告及び納税シミュレーションを通知
・ 災害等が発生した際の申告期限や納付期限の延長や雑損控除の適否等の通知

などを該当者にマイナポータルを通じてプッシュ型の通知サービスを行う予定にある。

ある税務サービスに関するアンケート調査では「プッシュ型」の人気が一番高く、望まれているサービスである。
士業は顧客の「知りたいこと」を通知、代行することが主業になるが、税務行政サービスが拡充すれば、更にその上を行く顧客の「知りたいこと」を通知していくことが望まれてくる。