会計事務所の人手不足は更に・・・
2019.09.12
※株式会社名南経営コンサルティング 顧問(元名南コンサルティングネットワーク代表)の影山によるコラム。最新のツールや話題のテーマをさまざまな切り口でお届けします。
経理人材や税理士等の資格者を一般企業や税理士事務所等の専門組織に紹介する、人材紹介業を営むMS-Japanの業績が絶好調である。2016年に上場した時の売上高は約20億円だったが、2019年3月期決算では売上高38億円と僅か2年余りで2倍の急成長を遂げている。
人材紹介事業なので売上高は紹介人数×紹介手数料とされ、2019年の紹介手数料単価は約180万円となっていて、紹介先が一般企業向けと会計事務所向けの領域別で売上高が明示されている。
2019年3月期決算では一般企業向け紹介売上が前期比126%の約29億円、専門組織向け売上が前期比108%の約8.5億円で過去最高を上場来更新し続けている。
同社の特徴は自社サイトでの求職者の新規登録数の割合が8割を超え、年間の新規登録数が17,000人を突破し、2019年4月~2019年6月の第一四半期では5,200人の新規登録数となり、対前年同期比で118%となっている。紹介人数は求職者の新規登録数に依存するので2020年決算も過去最高を更新する模様だ。
一般企業ではベンチャーやIPO予定企業などが経理経験者として部門を任せられる人材を求めたり、中小企業も海外進出に伴って海外経理に精通した人材を求めたり、自社内で税務申告を完結させたいと思う企業が税務に明るい人材を求めたり、従来からある「経理人材の後継者」需要も含めて「人材不足」状態が続く。
会計事務所業界では、昨年の税理士受験者数が実人員ベースで10年前と比較して約2万人減の3万人となり合格者数も半減に近い5000人割れとなった。
税理士業の将来性や給与・労働時間等の待遇面で、魅力ある仕事と思われなくなってきているところがこの業界での課題でもある。
税理士法人も急速に増え、それに伴い資格者需要も旺盛になるが、税理士を目指す人が減るなかで、より条件のよい同業内での転職ニーズが高まっても不思議ではない。
紹介手数料1人に180万円は税理士事務所では相当負担が大きい。しかし、こうした人材紹介を利用しなければ同業に転職されるか、一般企業に経理人材として持っていかれることにもなりかねない。消費税の軽減税率導入後の業務負荷は人手を要する。税理士業の人手不足感は今後さらに強まってくるだろう。