相談者が身近にいない税目
2022.02.02
※株式会社名南経営コンサルティング 顧問(元名南コンサルティングネットワーク代表)の影山によるコラム。 最新のツールや話題のテーマをさまざまな切り口でお届けします。
昨年12月に令和2年分の国税庁の相続税申告実績が公表された。概要は
- 被相続人数は約137万人
- 申告した被相続人は約12万人
- 課税割合は8.8%
- 相続税額は約2兆円強
- 被相続人1人当たり課税価格は約1.3億円
- 被相続人1人当たり相続税額は約1,700万円
同時に公表された相続税調査の状況を見ると、令和2事務年度(R2/7月~R3/6月)の概要は、コロナ禍での税務調査という特殊事情もあり
- 実地調査件数は約5,100件で、前年の約1/2相当
- 申告漏れ件数は約4,400件で、実地件数件数の約9割弱
- 1件当たり追徴税額が943万円で、前年比で約1.5倍に達した
実地調査を選択した先の課税価格帯が3億円以上の申告書を、主に重点調査した結果ともいえる。
無申告事案に対しては
- 実地調査件数は462件で、前年の約4割強
- うち申告漏れ件数が409件
- 1件当たり追徴税額が1,328万円で、前年の約1.5倍
東京国税局の相続税申告実績の概要は
- 実地調査件数は1,522件
- うち申告漏れ件数は1,342件で、非違割合は92%
- 1件当たり追徴税額が1,286万円で、前年の約1.9倍に相当
コロナが収束し平時の税務調査を迎えると、無申告事案の実地調査件数も1,000件は超えることは確実で、特に被相続人の大部分は女性になるものと思料される。事業経営などで税理士と接点の少ない被相続人が多くなり、意図的な脱税でなく、「相談者が身近にいない」ことでの相続税無申告事案を防ぐ努力が、税理士業界に更に求められてくる。