CASE STUDY事例&成功のヒント

事例から学ぶ成功法則

廃業のタイミングと相談者

※株式会社名南経営コンサルティング 顧問(元名南コンサルティングネットワーク代表)の影山によるコラム。最新のツールや話題のテーマをさまざまな切り口でお届けします。

東京商工リサーチの2020年「休廃業・解散企業」動向調査が、今月18日に公開された。

2020年1~12月に全国で休廃業・解散した企業は49,698件で、同社の調査開始以来の最多件数であった。更に特徴的なデータでは

  1.  休廃業する直前期決算で損益が黒字だった企業の割合は6割超
  2.  代表者年齢では70代の構成比が4割超

コロナ禍で補助金や資金繰り支援を受けたものの、後継者が発掘できないか、先行きの見通しがつかない等の理由で休廃業・解散を選択したのだろう。
2021年も、後継者問題及び現経営者の事業意欲の後退が、休廃業件数を更に押し上げることになるであろう。

廃業には、従業員や顧客への十分な説明と理解が必要になる。同時に、損益ではなくキャッシュベースで債務超過とならない確認が重要なポイントになる。
借入金返済残高、買掛金・未払金、未納税金・保険料、退職金……の支払総額を、実際の現預金残高+今後の回収額で賄えるのか、丁寧なシミュレーションが重要である。

銀行の借入金やリース残高に個人保証をしていないかの確認も必要である。
信用保証協会のガイドラインに基づく保証債務整理を成立させた件数は、令和2年4~9月の半年累計で414件、月平均69件にしか過ぎない。最大で360万円の現金と華美でない家を残して、銀行借入金をチャラにできる経営者保証のガイドラインの利用実態は、この程度でしかない。

廃業にはタイミングが重要なファクターである、タイミングを逃すと倒産・破産の道しかなくなる。
後継者発掘で社内昇格や第三者への引継ぎが可能でないのか、事業譲渡で専門家・知人・専門サイト等を利用して譲受人を探せないか、再度徹底した確認が必要になる。それには時間も相当要するだろう。

経営者が廃業の決意を固めても、明日には廃業ができるわけではない。本当に親身になって相談ができる相手がいる。
廃業のコンサルタントでもなく銀行員でもなく、相談者は会計事務所の担当者であってほしいと、経営者は思っているのかもしれない。